1. 記事の概要
NKCSホールディングス名誉会長である新原ジーニョ(新原克弥)氏は、1000以上の仕事と100以上の業種を経験した結果、「小学校が一番素晴らしかった」という結論に至りました。現代の企業や社会が抱える問題の根源は「人間関係」と「心の欠落」にあると断言し、その解決策として、競争や効率を優先する中で失われた「人間としての本質」を、小学校教育の原理に立ち返って学び直すことを提唱しています。
主要な提言は、経営者が「人としての感性」を取り戻すための**「小学校型経営教育」の実践と、社会全体を愛と調和に基づいた共同体へと変革する「地上天国文明建設」**という壮大なビジョンです。この思想体系において、企業は単なる利益追求組織ではなく「魂の学校」と再定義され、経営者は数字を管理する者から、社員一人ひとりの心に光を灯す「教育者」としての役割を担うべきだとされています。
2. 小学校教育の本質
新原氏は小学校教育を「人間を育てる」奇跡の現場と称賛し、学力以前に「人間としての根」を育む点にその本質があると述べています。
•社会の縮図としての教室: 子どもたちは日々、ぶつかり合い、泣き、笑い、仲直りする中で、社会の縮図を体験し、人間関係のドラマを繰り広げます。
•「生きる力」の育成: 給食当番や掃除、運動会などの共同作業を通じて、「みんなでやる」「助け合う」「話し合う」といった社会を生きる力を身体で学びます。
•先生の「まなざし」: 教師は子どもを成績や点数だけで評価せず、その内面の光を見抜き、変化や心の痛みに寄り添う姿勢がリーダーシップの原点であるとします。
•「人が人になる教育」の場: 仮面をかぶらずに感情を表現し、他者との距離を測りながら「人間関係の教科」を学ぶ場所であり、「人間が変わる瞬間」が生まれる場です。
他の教育段階との比較では、幼稚園は「守られる世界」、中学校は「自我と社会の橋渡し」、高校は「使命と責任のステージ」と位置づけ、人間形成の最も重要な土台は小学校で築かれると強調しています。
3. 現代社会と企業が抱える課題:「心の欠落」
社会に出ると、小学校で育まれた人間関係の基礎が失われ、「心の欠落」が現代社会と企業の病の根源であると分析しています。
•仮面をかぶる大人: 立場の壁を作り、本音を出さずに建前で関係を築くことで、魂の交流が失われます。
•人間関係の問題: 企業の問題の9割は「人の関係性」に起因し、信頼関係がなければどんな仕組みも崩壊すると指摘します。
•経営者の課題: 多くの経営者は数字を追うことに熱心で、人と真剣に向き合うことを避け、社員の心に火を灯すことができていません。
•専門職における問題: 医療、福祉、法律といった専門職の現場でも、忙しさや制度に追われ、患者や利用者の「人間としての痛み」や「感情」が置き去りにされています。
•孤立という病: 現代社会の最大の病は「孤立」であり、SNSで繋がっていても心は離れており、「相談できない社会」は滅びていくと警鐘を鳴らしています。
4. 提案:小学校型経営教育
これらの課題を解決するため、新原氏は経営者こそが小学校教育を受け直すべきだとし、具体的なカリキュラムを構想しています。その目的は、経営者が失った**「人としての感性」**を取り戻すことです。
経営の再定義
•経営とは教育である: 経営の本質は利益を出すことではなく、人を生かすこと。会社は「魂の成長の道場」であり、経営者は「人を導く師」であるべきだとします。
•企業は「魂の学校」である: 会社は人間教育の場であり、利益を超えた「人の成長」を目的にしなければ永続はあり得ないとしています。
小学校型経営の3つの原則
1.人を数字でなく“魂”として見る: 社員の売上や成果だけでなく、何を恐れ、何を望んでいるかに目を向けます。
2.間違いを責めず、成長の種とする: 失敗を恐れる組織より、失敗を糧に前に進む組織が強いとします。
3.感情を共有する文化を作る: リーダーが自分の感情を正直に語ることで、組織に「本音の風」が吹くとします。
経営者向けカリキュラム構想(全6ステージ)
ステージ | 内容 | 目的 |
第1ステージ | 小学校の一日を体験する | 肩書きを忘れ、生徒として日常(掃除、給食等)に参加し、頭をゼロに戻す。 |
第2ステージ | 先生の“まなざし”を学ぶ | 先生の観察手法を学び、社員の行動の裏にある「心」を読み取る訓練を行う。 |
第3ステージ | 子どもたちとの共同プロジェクトを体験する | 子どもたちと共に目標を達成する喜びや難しさを知り、真の協調性を学ぶ。 |
第4ステージ | 「心の筋肉」を鍛える運動会 | 競争だけでなく、助け合い、励まし合う中で、心の繋がりとチームワークを再構築する。 |
第5ステージ | 「いのちの授業」で原点回帰 | 命の尊さ、自然との共生を学び、経営者としての倫理観と使命感を再確認する。 |
第6ステージ | 卒業制作:地上天国文明建設プラン | 小学校で学んだことを活かし、自社や社会を「地上天国」にする具体的な計画を策定する。 |